遠野物語


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遠野物語:柳田國男全集第2巻

久しぶりに柳田國男全集第2巻の遠野物語を開いていると、中から17年前に訪れた岩手県遠野市のメモ書きが出てきました。

今回の地震では、遠野市は幸いにも被害が比較的少なかったようですが、市をあげて避難者の受け入れや被災地の復旧に携わっておられる方々が多く、体調や作業でのケガなどないよう十二分に気をつけられますように。

メモ書きを目にしながら当時を振り返ります。
ちょうど美瑛町に移り住む前年のことで、旭川・美瑛方面へはいつも車で千歳・札幌から往復行き来していました。

私は美瑛町から車で札幌に行く時は、滝川から国道12号線ではなくいつも275号線を経由します。この国道はJR札沼線(学園都市線)と平行に走っており、浦臼町:道の駅「つるぬま」を過ぎ、しばらく進むと右手に 『JR札比内駅:さっぴないえき』 が目に入ります。
すぐ側には札比内川が流れています。

 
JR札比内駅 (さっぴないえき) 】
北海道樺戸郡月形町字札比内(かばとぐん つきがたちょう)にある北海道旅客鉄道(JR北海道)札沼線(さっしょうせん)の駅。
電報略号はサヒ。
駅名由来)
開 駅 昭和10年10月03日
起 源 アイヌ語 「サッ・ピ・ナイ」 (涸れた 細い 川) から出たもので、現在の札比内川をさしたものである。
 
そして旭川方面の隣駅が、また難しい名前で:
晩生内駅 (おそきないえき) 】 ふりがなが無ければとても読めません。
所在地 石狩国樺戸郡浦臼
開 駅 昭和10年10月03日
起 源 アイヌ語 「オ・ショシケ・ナイ」 (川口の岸が崩れている川) から転訛したもので、同地の地勢からこのように名づけたものである。
 
※ 共に、北海道駅名の起源 (高倉新一郎、地理真志保、更科源蔵、河野弘道監修)より



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この 佐比内 という地名。

実は遠野市上郷町にも佐比内という地名があります。(こちらの読みは:さひない 岩手県内には三個所ある)

古い話になりますが、1994(平成6)年に遠野三山の一つ 『六角牛山:ろっこうしさん(1,294m)』 を訪れました。

 
六角牛山 (ろっこうしさん) 1,294m 】
北上高地の中南部、遠野盆地の東部にある六角牛山。その美しい山容から、遠野小富士や六神石山などと呼ばれています。
 
山名の由来は、アイヌ語の「山容の垂れ下がる」という意味、その昔6人の皇族が住んだという「六皇太人・ろっこうし」、山の女神「おろく」の名をとったなど諸説があります。
多くの伝説や物語を持ち、遠野物語にも度々登場します。
標高1,294mの山頂への道は、5合目付近から岩場が増え急坂が続きますが、山頂近くでは高山植物も楽しめます。そして頂からは遠野盆地や、周辺の山々が見渡せます。
 
【 遠野三山 】
早池峰山(はやちねさん) 石上山(いしがみさん) 六角牛山(ろっこうしさん)  


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翌日は釜石鉱山へ向かう予定。 ところが!

夜、宿泊先で地図を広げ近隣の名所旧跡を調べていると、今まで何度も地図を見ながら気にもかけなかった「佐比内」という地名やそこを流れる川「猫川」という名が目に付きました。
「猫川」とは? いかにも遠野らしく言い伝えがありそうな名で、宿で話を聞くと 『遠野物語拾遺 (とおのものがたりしゅうい)』 に出てくるらしい。

そして近隣の見所の話になり、JR遠野駅から車で30分ほど行くと、江戸時代の南部地方特有の住居と馬屋を平面L字形に連結した農家建築 「南部曲り家」 を代表する建物として知られている 『千葉家』 があることを聞き、心が揺らぎ始めたのです。

そして翌日、急きょ予定を変更し鉱山は取りやめ、気が変わり曲り家へ行くことに。
江戸時代後期に、斜面地に築かれた石垣上の平地にある面積540㎡の大型の住居で、25名の人と20頭の馬が暮らしていたという千葉家を訪れ帰宅しました。


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千葉家 両画像共:Wikipediaより

※ 帰宅後
北海道と東北の地名類似はよく知られていることで、遠野の佐比内も北海道の佐比内と同じくアイヌ語語源なのか?

調べてみるとやはり、アイヌ語地名の研究 (山田秀三著作集)に出ているではありませんか。山田氏は常に丹念に足を運ばれ、その徹底した現地調査によりアイヌ語地名かどうかを判断されたアイヌ語地名研究の第一人者です。


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アイヌ語地名の研究 (山田秀三著作集)

 
遠野の佐比内(サヒナイ)は北海道の札比内(サッピナイ)と同じ地形であることが判然とした。アイヌ語のサッ・ピ・ナイ(乾く・小石・川)のようである。
※ アイヌ語地名の研究3 (山田秀三著作集)より
 
Sat pi nai  サッ ピ ナイ
涸れたる小川(此川ニ沼アリ早スレバ乾キ雨フレバ湿ス)
北海道蝦夷語地名解 (永田地名解)
 
備)

本の最北端:稚内を始め、神恵内、真駒内、朱鞠内、振内、札内幌内、幌加内 ・・・ 。 道内至る所にある内のつく地名。
:nay (地理真志保表音表。従来は nai と書かれている)
アイヌ語で川のことですが、沢や谷川を呼ぶのが一般的。
 
登別、仁別、門別、紋別、標津、士別、浜頓別、幌別、芦別、尻別川、温根別、サロベツ ・・・ 。
:pet
こちもアイヌ語で川を意味します。
 
内と別、どちらも川の意味ですが、山田秀三氏によると土地により若干用例が違い、樺太では「内」を主用し、千島では「別」が圧倒的に多いとのことです。
地元美瑛町にも、朗根内(ロウネナイ raune-nay)、宇莫別(ウバクベツ upak-pet)という地名があります。

遠野の佐比内もアイヌ語語源であると。

次に遠野物語拾遺にも出てくる猫川とは。

 
「青笹村の猫川の主は猫ださうな。洪水の時に、此川の水が高みへ打ち上がつて、大変な害をすることがあるのは、元来猫は好んで高あがりするものであるからだと謂はれて居る。」
※ 遠野物語拾遺 176
 
【 遠野物語 】
遠野市土淵町出身の小説家・民話蒐集家であった佐々木喜善が子供の頃から聞かされたり土地に伝わる話(民話)を柳田國男に語り聞かせた物を柳田が文語体に改め筆記・編纂し自費出版した初期の代表作で、『遠野物語』本編は119話で、続いて発表された『遠野物語拾遺』には、299話が収録されている。

猫川が、かなりの荒くれ暴れ川である様子がよく分かります。

ちょうど遠野へ訪れた年:1994年頃から地方でもダイアルアップ接続用のアクセスポイントの開設が容易になった頃で、インターネットが身近になり始めた頃のことでした。
また翌年、Microsoft社がTCP/IPスタックを標準で搭載したWindows95発表し普及に拍車がかかったのです。
そしてこの年、阪神・淡路大震災が発生。

たとえメモ書きとはいえ、記録という行為がなければ今日このような書き込みはしていなかったことでしょう。

【 十勝岳定点観測 】


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十勝岳:午後5時 (自宅庭先から)

噴煙も少なく、穏やかな表情。暖かな一日でした。

晴れ17:05 気温/7℃ (.all images:biei.info)

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